ボールゲームを通して子どもたちの健全な育成
特定非営利活動法人 バルシューレジャパン

活動地
奈良市
概要
ボールゲームを通して子どもたちの健全な育成
取材日
2010年2月18日
バルシューレ・ジャパンのロゴ 高橋さんと丹羽さん

こどもの頃、寒い冬でも外でキャーキャー言いながら育った人たちには、自分の子どもを含め、最近の子どもたちが家の中 でゲームに熱中して外で遊ばなくなった事に、不安を感じているのではないでしょうか。このような課題に注目する特定非営 利活動法人バルシューレジャパンの理事長 高橋 豪仁さんと、理事 丹羽 亜矢子さんに、奈良教育大学内の事務所でお話を伺 うと共に、奈良学園小学校の課外授業で理事 丹羽 敦巳さんが指導されているバルシューレ教室を見学してきました。

■ バルシューレとは

一昔前なら子どもたちにとっての学び場は遊びに満ち溢れた路上や公園や空き地でした。ボールを投げたり/捕ったり/蹴った りといった運動技能や、集団で遊ぶことによる社会性は、子どもたちの生活世界の中に当然のごとく組み込まれ、日常生活の中 で身につけられてきました。ところが残念なことに、今日では、外で遊ぶ事が少なくなっており、そのことによる弊害について は、健康への害や体力・運動能力の低下はもとより、社会性や情緒といった側面への悪影響など、さまざまな指摘がなされてい ます。

この弊害を取り除く為、日本と同様に、問題が顕著化してきていたドイツにて、ハイデルベルク大学スポーツ科学研究所のク ラウス・ロート教授により開発されたのがボールゲームであるバルシューレです。

バルシューレ(Ballschule)はドイツ語で、英語で言うとボールスクール(Ballschool)、子どものボールゲーム教室のことで す。バルシューレは幼稚園児や小学校の低学年の子どもたちに、特定のスポーツ種目(バレー、バスケット、テニス等の球技種 目)を教えるのではなく、そういった球技種目全般に共通する基礎能力の育成を目指しています。早くから特定の競技に特化す るのではなくて※、まずはオールラウンドな能力を身につけるというコンセプトと、小学校の低学年や幼稚園の子どもたちを楽 しく遊ばせ(ゲームの中でどういった能力が身に着いたかを十分に認識したうえで指導)、子どもたちの健全な育成する事を目 的としています。

(※) 種目ごとの専門的な運動技術を教えられると、能力とのギャップが大きすぎて拒否反応を起こしたり、大きく開花するはず の年齢に達する前に燃え尽きてしまうことも珍しくありません。この為、ボールを使った様々な運動を楽しく行い、運動能力の 開花を目指しています。


活動内容

「大学教育の国際化推進プログラム」
報告書

■ バルシューレジャパンとは

ハイデルベルク大学と奈良教育大学は姉妹校です。平成18年度の文部科学省助成金事業「大学教育の国際化推進プログラム」として奈良教育大学木村真知子先生がハイデルベルク大学から中心となる先生を招いたり、研究員の人に半年ぐらい滞在してもらい指導法を学びました。国内諸大学の研究者とも連携協力し、日本に適したプログラムの開発、指導者の養成と共に、バルシューレ教室を開いて日本への普及に努めてきました。

助成金事業は終了しましたが、この活動を終わりにせず持続可能な組織として、日本語版バルシューレの知的財産権を持つ奈良教育大学と密接な関係(*1)を持ちながら社会への普及活動する為にNPO法人を昨年8月に設立しました。

(※1)バルシューレジャパンの高橋理事長は奈良教育大学のスポーツ社会学が専門の教授、監事は同大学の副学長です。事務所は同大学にあります。同大学の学生はバルシューレを1回生の授業で学び、2回生で指導の実習を行っています。

  • バルシューレ教室を奈良教育大学付属小学校(10回のコースを年2回)、王寺町総合型倶楽部(12回のコースを年3回等)、奈良学園小学校(年間33回)で行っています。
  • バルシューレ指導員の講習会は、京都府八幡市で行い、奈良教育大学の学内でも3月に行う予定です。

取材後に、奈良学園小学校の1年生と2年生のバルシューレ教室を見学させてもらいました。尚、王寺町の教室で奈良学園に通っている親ごさんの関係で奈良学園から指導の依頼があったそうです。

2年生の教室 2年生の教室 2年生の教室 1年生の教室
①5名が1チームになり、二つのチームが対戦し、相手陣地へボールを転がして投げるゲーム。②相手陣地のゴールをボールが通れば一点獲得。③守備位置等は、子どもたちが決めています。 はじめはボールが二つですが、四つになり、守るも攻めるのも大変です。 ①二人一組で関門の間を、サッカーのように足だけでボールを蹴って通します。②その次には色の違う関門を通し、決められた個数の関門を早くクリアできるかの競争です。③二人は正確にパスを通し、次に通す関門の色を早く決めなくてはいけません。 二人一組でボールをバレーのように直接パスし合います。

■ 取材を終えて

高橋理事長が、「みんな集まって何か一つのゲームをしようとした時に、子どもたちは、今自分はどういった状態に置かれていて、どういった事が求められているかを感じて、自我を確立していく。バルシューレは社会性を身につける事を特に意図して重視していないが、そうならざるを得ない。」と言われるように、バルシューレは、基礎運動能力の育成が基本にあるものの、父兄に行ったアンケート結果から「子どもに社会性を身につけてほしい」という願いにかなったものであると思いました。

「何が何でも上手く、と言うよりも、むしろ友達と仲良く楽しくやった、面白かったと家へ帰って話してもらえる事が一番喜ばれている」とも言われており、家庭内でのコミュニケーションにも役に立っています。

ドイツでは、競技力向上の為の目的で始まったのですが、普及してみると、競技能力の向上よりも、むしろ運動が苦手な子どもたちがよく運動するようになる効果の方が大きかったようです。さらには、指導者である教育学部の大学生は、子どもたちを前にして教える際、如何に子どもたちにわかるように説明できるか、如何に適切な指示が出せるか等、教える為の勉強をする場にもなっています。

これからは、認知度を上げる事と指導員を増やす事がバルシューレを広める鍵だと思います。指導員の講習会は奈良県内だけでなく、必要あれば全国どこへでも伺うとの事ですので、バルシューレを習いたい方も含め、ご興味のある方は下記のお問い合わせ先にご確認ください。 また、バルシューレの解説書として[『子どものボールゲーム バルシューレ』(編著:木村 真知子 発行所:(有)創文企画)]が発行されています。

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