平城宮跡の素晴らしさを守り伝えたい
特定非営利活動法人 平城宮跡サポートネットワーク

活動地
平城宮跡一帯
概要
平城宮跡の環境保全、広報、イベント企画、文化教育事業などを通じ、訪れる人々の目的に応じた最適な空間を提供します。
投稿日
2010年7月27日
シンボルマーク
シンボルマーク

ある日の大和西大寺から近鉄奈良に向かう電車で、平城宮跡の展望が開けると突然若い女性達の声が聞こえてきました。『わあ、なによこれ、牧場みたい。建物があるけど何かな?』。まだ大極殿に覆屋のある頃の出来事でした。知られているようで意外に知られていない平城宮跡です。

特別史跡「平城宮跡」の環境を守り、教育文化や広報活動を通して、宮跡を訪れる人々に最適な空間を提供しようと活動を続けている、特定非営利活動法人 平城宮跡サポートネットワークの事務所は、平城宮跡内の奈良文化財研究所の敷地内にあります。ここで理事長の伊部和徳様と副理事長の本井建治様(広報担当)に活動の思いを伺いました。

世界遺産にも登録され、広大な敷地を有する平城宮跡の調査、研究を行う奈良文化財研究所では平成10年に朱雀門が完成したその翌年の秋から、平城宮跡の公開活用促進の観点から、同研究所が募ったボランティアによる案内、解説を行っています(平城宮跡解説ボランティアと呼ばれています)。発掘調査、整備、維持管理、公開活用は国の施策で推進されますが、平城宮跡の環境保全や文化財の活用を行うには、行政の枠組みを越えた目的志向で動くことのできる同志の組織が必要です。ボランティアが活動を始めた頃、宮跡を周遊していると、ごみ、自転車、家電製品の不法投棄が目立ちました。単に案内、解説をするだけではなく、あらゆる方面から平城宮跡を支援したいという平城宮跡解説ボランティアの皆様が中心となって平城宮跡サポートネットワークが設立されました。

活動内容

第一次大極殿
第一次大極殿

平城宮跡資料館や遺構展示館には、平城京の人々が実際に使用していた出土品とか復元物、建物模型など沢山の資料や物語が詰まっています。また数々の復元施設の中でも大極殿や第二次大極殿基壇からの眺めは宮跡の全容が目に浮かんでくるようですし、遠くには、北は山城との国境に横たわる佐紀丘陵(奈良山)、東に若草山、春日山、西に生駒、信貴山、はるか南には飛鳥や葛城・吉野の山々を望むことができます。

平城宮跡の自然も魅力の一つです。梅の木、柳、桜並木、サツキ、サザンカ等の植樹、すすき、定期的に草刈りされる野草、湿地や池にあつまる水鳥、野鳥、渡り鳥、昆虫等の動植物、平原を囲む山々、浮かぶ雲や空の色の変化等、地下に眠る遺構とは対照的に季節、気候、時間とともに千変万化の移ろいは、その広大な空間の中で実に豊かに表情を変えています。中秋の名月の頃、草むらから聞こえてくる秋の虫たちの大合奏は実に圧巻です。

しかし、目に見える自然は楽しめますが、多くの人は建築物や出土品は見ても心に響いてきません。宮跡の物語を解説してくれる人がいると、その興味は飛躍的に高まります。会員は必ずしも平城宮跡についての考古学的、歴史的専門知識があるわけではなく、会員それぞれが違った角度で感じるロマンや、知識を多くの人々に知ってもらいたいという思いで活動し、このネットワークを育て広めています。1km四方にわたる平城宮跡の魅力を知ってもらうために、平城宮跡解説ボランティアを中心に結成された平城宮跡サポートネットワークは、大きく3つの事業を柱として責任者を決めて活動しています。

 環境保全事業

クリーン活動 クリーンフェスティバル
クリーン活動 クリーンフェスティバル

最近、平城宮跡において火災が多く発生しています。また、ゴミの不法投棄や犬の放し飼い、ゴルフ、ラジコンなどのマナー違反が目につき、歴史探訪・散策を楽しむ来訪者や近隣住民の皆様への迷惑行為となっています。このため、平城宮跡に関連する行政機関や団体等10団体により平成21年末に奈良文化財研究所に事務所を置く「平城宮跡みまもり隊」を発足し、平城宮跡のパトロールをボランティアの皆様と一緒に実施することとなりました。

月3回の定期パトロール、平城宮跡の日常的クリーン活動、市民運動としてのクリーン大会(クリーンフェスティバル)の開催、宮跡のバリアフリーや防犯、防火、安全問題などの対応を継続して行っていることが強みです。

 教育・文化事業

歴史、考古学の講演会や研修会、子どもに対する宮跡の自然環境や歴史、文化財等の学習会、出前教室(学校、公民館、事務所)などを行なっています。

遺跡発掘見学 出前拓本教室 瓦工場見学
遺跡発掘見学 出前拓本教室 瓦工場見学
かるた大会 子供文化財パトロール(文化財体験学習) 出前歴史教室
かるた大会 子供文化財パトロール(文化財体験学習) 出前歴史教室

其の道の第一人者を招いての平城宮跡歴史文化講座は、今年9月で12回目となります。この講座は会員の勉強の場でもありながら、一般の人たちにも解放して平城京の歴史文化への理解を深めることに役立てています。

 広報・企画事業

会報「平城のひろば」創刊号
会報「平城のひろば」創刊号

平城宮跡では、不変の文化的、歴史的な財産が独自性の高い空間を作っています。奈良時代の先人たちの国づくりの思いを現代に伝え、自然の環境と調和させ、楽しみ、くつろげる場、変わることのない文化的安定感を醸し出しています。平城宮跡サポートネットワークは、この不変の価値を守り、共生して、文化交流を育む役割を担っています。この思いを形にする事業の一つとして広報にも力を入れています。

会報とホームページを活用して、会の活動や平城宮跡の公開施設の紹介、イベントの広報などを行っています。広報紙の「天平のひろば」は、創刊2001年11月から3カ月ごとに連続して発行され、期間中の講演会、イベントやホットな話題、四季折々に宮跡に訪れた野鳥の写真とその解説、宮跡の野草の話、解説中のこぼれ話など交え、内容がとても楽しく充実しています。既刊分の総てをホームページで閲覧することができ、平城宮跡を生き生きとしたものとして捉えることができます。

また、他団体の「関西元気文化圏」「奈良ボランティアネット」「奈良リビング」「近鉄ケーブルテレビ」「奈良21世紀フォーラム」「大阪・奈良歴史街道リレーウオーク」のホームページと相互にリンクさせて、自団体のホームページへの上手な誘導ができています。

 他にもある活動

街道ウオークパレード 歴史街道ウオーク完結式
街道ウオークパレード 歴史街道ウオーク完結式

平城宮跡で恒例的に開催される様々な事業、例えば「平城遷都祭」、「平城京マラソン」、「クリーンアップならキャンペーン」などに積極的に参加しています。

平城宮跡は奈良と大阪の観光ガイド16団体が大同団結して開催した「大阪・奈良歴史街道リレーウォーク」の終着地点であり、更に秋から始まる第二次ウォークのスタート地点になっています。そこでは、平城宮跡サポートネットワークはホスト役として重要な役割を果たしています。

また「平城遷都1300年祭」を迎えるに当たり、事業主催者や関係機関との企画調整・試行のほか、内外からの下見調査団のガイドなどにも参加して来ました。「1300年祭」終了後もその遺産やソフト継承のための活動に参加する予定です。

 取材を終えて

平城宮跡に関連する他団体と共に活動すること、出前教室、講演会、イベントなどの見える活動になっていますが課題もあります。今年、「飛鳥古京を守る会」が会員の平均年齢が70歳を超えて活動が困難になったとして、40 年の歴史に幕を閉じたことを念頭に、「会員の高齢化が進んでいる。このままでは活動に支障が出る」「活動する人が固定化する傾向と、グループが出来ると横のつながりが疎かになる(壁が出来る)」と強調されました。また、事務局に専任者を置くことは多くのNPOの共通の望みですが、平城宮跡サポートネットワークも例外ではありません。多くの団体と同様に、若い人材と専任者を如何に確保するかが課題です。

平城遷都1300年祭後にも、国営飛鳥・平城宮跡歴史公園の特長が誰にでも理解され、生活の一部として利用、活用される市民目線サービスとして整備が進められることの行政への助言が一つ。次には冒頭の女性達の「なぜこんなところに草原が?」を笑い話に終わらせない、電車を降りて資料館を見ることから始まる、花開いた仏教の知恵、律令国家の始まり平城(なら)人の壮大なロマンの水先案内人としての同法人の役割は甚だ大きいものがあります。

奈良文化財研究所や同じ思いで活動する他団体とのネットワークを大切に、平城宮跡を管理する諸省庁、行政の壁を越えてその時々の社会の要請に工夫を重ねて適切なサービスを提供する平城宮跡サポートネットワークには、今後もたくさんの支援が期待されています。

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