吉野林業の復興と地域活性化
特定非営利活動法人 Yoshino Heart

活動地
吉野町を中心とする奈良県全域、東京都
概要
マーケティングの力で森林の活性化と経済活動を両立させる - ボランティアではない持続可能な仕組みづくり
取材日
2010年3月5日
西元さんと服部さん(右)
西元さんと服部さん(右)

割り箸は国内で1年間に約250億膳使われています。そのうちの98%は中国産で残り2%が国産、国産の8~9割が奈良県の吉野産です。その奈良県吉野では、木材価格の低迷が続いており、最近では80~90年も手塩にかけて育てた杉を10トントラック一杯の量を売っても、収益は2~3万円程度と言われています。その為、間伐が出来ない、間伐しても搬出できないので木材は森の中に寝かされたままとなり、三大人工美林と言われた森も荒れ始めています。

その林業を復興することにより、森と地球環境を守りつつ地域の活性化を行い、更にはNPOの活動資金が得られる仕組みを実現させようとしているNPO法人Yoshino Heart理事の服部進さんとNPO法人を応援・支援している南都銀行の総合企画部 西元雅彦さんにお話を伺いました。

■ 設立の経緯
中国産割り箸に比較して4~5倍高い吉野産を使い、割り箸の袋に広告を入れる事によりその差額を埋めるアド箸(※1)の事業をハートツリー株式会社(代表取締役 服部進)が行っていました。しかしその吉野の森は、間伐が出来ない、間伐しても森の中に寝かされたままとなっている現状です。

吉野杉の流通促進の為に、ユーザーニーズをつかんで商品を作り、プロモーションして売るマーケティングの経験を活かし、従来の業種別の仕組みを越えた「Yoshino Heartプロジェクト」という仕組みを服部さんは考え、2008年10月に「吉野の地域産業を発展させる会(仮称)」の発足説明会でその仕組みを説明し、2009年7月にNPO法人Yoshino Heartを設立しました。

発足説明会 設立総会 植樹会(下市町)

活動内容

■ NPO法人 Yoshino Heartとは

Yoshino Heartプロジェクトの仕組み(出典 南都銀行のニュースリリース)

山主さんから委託を受けた山守さんが原木を切って原木市場へ出す、製材業者は丸いものを四角にして材木業者に渡す、材木業者はそれを大工さんに渡す、大工さんは加工するというように、木材周辺業者は多層化しています。昔は木材が高く売れたので、それで皆が十分やれて行けたし、利益が出ていました。

それらの業種は個々に組織されているため、業種間の連携が乏しく、営業や商品開発を積極的にやっていなかったがゆえに、安い外材に市場を奪われ、今の森の状況になってしまっています。

それを、木材のマーケティング、吉野材の生産(林業家)、木材の加工、木材の販売等、林業に関係ある業者が出来る事を、公平性をもった一つのテーブルに載せ、そこに来れば、誰が何を出来るかがわかるような仕組みを運営するのがNPO法人Yoshino Heartです。そこに発注が来れば、NPOに手数料が入り、それがNPOの活動資金源となります。

林業家の方は木材をどうやって上手く供給できるかを考えます。マーケティング部門の一つであるハートツリー株式会社は吉野材のブランドを高め、売れる商品を考えます。ハートツリー株式会社はこれ以外にも、全国の「ロイヤルホスト」277店舗のメニュー敷紙に、吉野材を活用した3.9(サンキュウー)ペーパー(※2)を使用し、広告を載せる事で差額を抑えた事業も行いました。

■ 南都銀行との関係

山・川の日県イベントで割箸配布 「平成遷都1300年祭」のPRが入ったアド箸

南都銀行は2008年4月に発表した中期経営計画にCSR(企業の社会的責任)の推進をもり込みました。2008年6月に頭取に就任した吉野郡出身で吉野の森の窮状をよく知る植野頭取が、吉野の森を守り、林業を活性化したいとの思いを表明。その方針に基づき、地元のネットワークを生かして「Yoshino Heartプロジェクト」という仕組みを応援・支援する事になりました。

アド箸を社団法人平城遷都1300年記念事業協会と南都銀行がタイアップした「平成遷都1300年祭」のPRに使用したり、粗品を吉野箸に、また、使っている紙を吉野3.9ペーパーに替えたりしています。

■ Yoshino Heartの吉野への思い

物が売れなくなった時代の責任は流通にもあるが、ほとんどの責任は流通のいいなりになって物作りしている人の[物に対する思い]が無くなったからです。日本人は物作りの国民であり、「思いを作って物を作る」と言う事をもう一度日本人は思いだし、木の文化を持つ日本人が日本を誇りに思えるようになってほしいと思っています。

今回、吉野から始めているのは、日本国家発祥地のひとつと言われている奈良であり、一番初めから物づくりをしている土地であるからです。吉野が成功すれば、それをベースに日本が元気になると思っています。

■ 取材を終えて

NPO法人Yoshino Heartは収益目的ではなく、産業活性化の為の異業種連携プロジェクトであり、林業に係る人が活性化すればNPOに活動資金が回り、それによって森林が守られる仕組みです。NPO法人では活動資金が無いと活動を継続する事が困難になってきますので、吉野ハートの取り組みは参考になると思います。

まだこの取り組みは始まったばかりであり、事務局は完全に機能しておらず、『ネガティブな事を言う人がたくさんいるが、Yoshino Heartの取り組みはチャレンジであり一つの実験です。やりながら考えます。』と言われる服部さんの熱い思いがどこまで届くか注目されます。

地域活性化に欠かせない「よそ者・若者・馬鹿者」が揃ってうまくいくといわれますが、服部さんが吉野林業に係る皆さんの思いをユーザーに伝えるマーケティングという道具を使い、思いが集まる場所であるNPOの中で、良い意味でのよそ者によって吉野の活性化を進めて行ってほしいと思います。


(※1)アドとはadvertisementの略adで、広告の意味です。アド箸は、ナチュラルローソンで、弁当を買うと付いている割り箸に使用されています。

(※2)『3.9ペーパーシステム』は、森から木材を運び出す時の輸送コストを、紙を使用するユーザーが負担することによって、国産材の利用を促進する仕組みであり、林野庁が提案する「木づかい運動」(※3)の理念にもマッチしています。風力発電などの自然エネルギーと同じように『みなし利用』を取り入れており、豊富な紙の種類に対応でき、用途別に紙を選ぶことが可能となります。右の図は「木づかい運動」を象徴するロゴマーク「サンキューグリーンスタイルマーク」。

(※3)『木づかい運動』について
我が国の森林資源は、人工林を中心に充実しつつありますが、木材自給率は依然2割と低い水準です。国産材が利用されないことが、間伐の遅れなど、森林が有する多様な公益的機能の発揮に悪影響を及ぼしています。また、地球温暖化対策として、二酸化炭素を長期にわたって吸収、固定する木材の利用が注目されています。このような状況を踏まえ、木材、とりわけ国産材利用の意義を広め、実需の拡大につなげていくため、林野庁は平成17年度から国産材利用に関しての普及啓発活動を強化し、国民運動として「木づかい運動」を行っています。

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